2017年4月のひとりごと
https://www.hinomine-mrc.jp/
2024-02-23T13:35:35+09:00
-
text/html
2017-02-01T00:00:00+09:00
不登校について
https://www.hinomine-mrc.jp/pages/56/detail=1/b_id=301/r_id=73#block301-73
1
<div>
<div> 昨年12月に、不登校の児童生徒を国や自治体が支援することを初めて明記した議員立法の「教育機会確保法」が参院本会議で可決、成立しました。また昨年7月には文部科学省初等中等教育局長の諮問機関である「不登校に関する調査研究協力者会議」が、「不登校児童生徒への支援に関する最終報告」を「一人一人の多様な課題に対応した切れ目のない組織的な支援の推進」という副題を掲げて提出しました。調査研究協力者会議からの不登校に関する報告書が出されたのは平成4年、平成15年に次いで3回目でした。そこで今回の園長ブログでは不登校について述べます。<br />
私が小児科医として不登校の子どもたちと関わりだしたのは、平成5年前後からですので約25年になります。1年間に病院外来を受診したり、スクールアドバイザーとして学校現場や総合教育センターで相談を受けた子どもは年間約80人おりましたので、実に2,000人ぐらいの不登校で困っている子どもたちに関わったことになります。<br />
文部科学省による不登校の定義は「何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくてもできない状況にあること(ただし、病気や経済的な理由によるものを除く)」であり、今回の教育機会確保法では「学校を相当の期間欠席しており、集団生活に関する心理的な負担などで就学が困難な状況」としています。私自身があえて定義するならば「学校に行きたくても、あるいは行かなければいけないと分かっていても、何らかの強い抵抗感・拒否感を感じ、登校することが出来なくなって困っている、あるいは苦しんでいる子どもたち」という表現になります。<br />
私のところに来る不登校の子どもたちは、多くがそれまでに家族や学校と登校するしないで葛藤し、かなりの程度に疲弊しています。また、学校に行けなくなった自分自身に対して自己肯定感や自尊心が低下してしまっています。そこで私はまず、どの子に対しても「病院に来てくれたことをねぎらい」「小児科医は全面的に子どもの味方になる」ことを伝えます。そして、「これまであなたが学校に行かなかったことは、あなたにとっては大事な、必要な休養であった」と肯定的に捉えることを勧めます。次に「これから先に自分のしたいことが元気に出来るようになるために、体勢を立て直しエネルギーや力を蓄えていく」ことを目標に掲げます。<br />
具体的な対応は、臨床心理士による心理面接及び心身症的な症状や二次的に陥っている気分障害・睡眠障害に対する薬物投与を行いますが、最も大切なことはその子の心理社会的要因を十分に理解するということです。不登校の子どもたちを見ていますと心理社会的な要因は一人ひとり様々であり、100人いれば100通りの処方箋が必要です。次に大切なことは家族への対応と学校との連携です。家族が子どもの状態を適切に理解し、味方になれている場合や学校関係者が子どもの心理社会的状況を理解していただいている場合は、比較的早くに子どもたちは前に向くことが出来ます。そうでない場合は、どんなに子どもに対してアプローチしてもうまくいかず、長引いてしまいます。<br />
現在、不登校はどの子どもにも、どの家庭にも起こっているように見えますが、家庭と学校が子どもを信頼して、味方になって対応すれば、ほとんどのケースで乗り越えることが出来ているように思います。<br />
</div>
</div>