2019年10月のひとりごと
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2024-02-23T13:35:35+09:00
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2019-09-02T00:00:00+09:00
こどもの心臓病について
https://www.hinomine-mrc.jp/pages/56/detail=1/b_id=419/r_id=119#block419-119
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<div> 私の小児科医としての専門分野の一つに小児循環器学があります。そこで今月のブログでは子どもの心臓病について述べます。子どもの心臓病は、生まれつき異常のある先天性心疾患と出生後のどこかの時点で異常となる後天性心疾患に大きくわけられます。大部分は先天性心疾患であり、その頻度は出生数の約1%もありますが、心室中隔欠損症や動脈管開存症などは自然閉鎖する場合もありますので、ずっと経過をみなければならない疾患の頻度はこれよりも下がります。</div>
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<div> 先天性心疾患の中で最も多くみられるのが心室中隔欠損症です。これは心室中隔(右心室と左心室を2つに分けている筋肉の壁)に穴が開いている状態で、血液が左心室から右心室に短絡します。穴の開いている場所やその大きさにより病態や症状は異なり、自然閉鎖するものから手術しなければいけないものまで、程度はさまざまです。手術治療が必要のない場合が多く、ほとんどが生活や運動の制限はいりません。</div>
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<div> 次に頻度の高いのは肺動脈狭窄症です。右心室と肺をつなぐ血管である肺動脈が狭くなっている病気で、これも狭窄の程度が軽度から重度までさまざまです。軽症の場合は無症状であり治療の必要はありませんが、中等症以上の場合はカテーテル治療や手術で狭い弁や血管を拡げることがあります。三番目に多いのが心房中隔欠損症です。これは右心房と左心房の間を仕切る壁に穴が開いているものです。自然閉鎖する率は心室中隔欠損症に比較してかなり低く、手術またはカテーテル治療を行います。</div>
<div> 次に多いのがファロー四徴症で、これはチアノーゼ(唇や爪床が紫色になる)を示す疾患の代表的なものです。ファロー四徴症は肺動脈狭窄(右室流出路狭窄)、心室中隔欠損症、大動脈騎乗と右室肥大を伴います。手術治療が必要で乳児期に低酸素発作をきたすような場合はまず短絡手術を行い、その後に根治手術をします。その他にも先天性心疾患は多くありますが、重症の疾患としては完全大血管転換症、総肺静脈還流異常症、単身室、左心低形成症候群などがあります。これらは私が小児循環器病の診療を始めた昭和50年代は手術成績があまり良くなかったのですが、現在ではかなり改善されています。</div>
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<div> 後天性心疾患には心筋症、心筋炎、肺高血圧症、感染性心内膜炎、不整脈、川崎病に伴う心疾患などがあります。心筋症には左室心筋が肥大する肥大型心筋症と心室が著名に拡大する拡張型心筋症があります。学校心臓検診で見逃してはならない疾患です。心筋炎は心臓の筋肉に炎症が発生した状態を指し、心不全の原因になります。また致死性不整脈が生じることもあり重症な病気と言えます。感染性心内膜炎の原因は細菌性がほとんどですが、真菌性、ウイルス性のものもあります。ほとんどが心室中隔欠損症などの先天性心疾患がある場合に起こります。</div>
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<div> 不整脈の種類は多いのですが、上室性期外収縮や心室性期外収縮などの治療や運動制限の必要のないものがほとんどです。発作性上室性頻拍症や心室頻拍症などは治療が必要で、QT延長症候群には失神、突然死などをきたす場合があり注意が必要です。最後に川崎病に伴う心疾患には、冠動脈拡張や冠動脈瘤がありますが後遺症として問題となるのは約3%ぐらいです。</div>
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